【第三工程 肉を造る】
《必要となる材料》
肉付きのよい男性種 四千三体
節足動物の卵 七万百六匹分
銀糸のサテン 六十七反
秋の菩提樹の葉 十三枚と半分
硫黄 一掴み
銅 十貫
男性種、四千三体を熱湯につけ、身体を浄めさ
せたのち、頭をもぎ取り、表皮を剥ぎ、手早く
骨のみを抜き取った上で、内臓がまだ脈打つう
ちに節足動物七万百六匹からとりだした卵のつ
け汁に浸し、腐乱するにまかせる。
(死滅しはじめたばかりの細胞に、今から成長
をはじめようとする昆虫の卵を植え付けること
により、腐敗速度を調整し、のちの細胞再生を
促進させる)
異臭が、目に見える灰色の煙となって現れるよ
うになったところで、銀糸のサテンで慎重にこ
し、菩提樹の葉と硫黄、銅を丹念に練り込む。
(こすことにより、細胞の均一化をはかる。葉
などの異物の混入は、肉に粘性をもたせるため
である。)
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