寒鴉の群れが鳴く。
そこは、無数の羅漢像が物も言わずに立ち並ぶ廃虚である。
虚無の世界に半蔵はいた。
「悟れ。」
「闇より天道に抗う影あらば、闇にて天道の裁きを下す影もありと。」
覆面の下から言う半蔵の背後に、影が三つ寄り添う。
「お頭、火急の件にて急ぎ登城せよ。とのことです。」
うなずいた半蔵が眼前の闇に走りだした。
瞬間、半蔵の背後に残っていた巖陀羅が地の底から現れる。
しかし、半蔵は振り向かず、刀のみが後ろに走った。
一瞬、時が止まる。
「早々に涅槃へ逝け。」
闇に消える半蔵の背後、鴉の群れがいっせいに飛びたつ。
瞬間、巖陀羅が血しぶきをあげて崩れ落ちた。
鴉が一声、甲高く鳴いた。
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