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 果たし合いの時は来た。
  幻十郎の刀が覇王丸の刀を弾き、振り上げられる。
  梅鶯毒が光を放った。
 「覇王丸、殺す!!」
  瞬間、熱く重い衝撃が幻十郎の背を貫く。
  振り向くと、子供が幻十郎の背へ短刀を突き立てていた。
 「お前がお父をっ・・・」
  薄れ行く意識。背中の傷が開き、身を染める血煙の中で幻十郎は母の
  顔を見た。
  落日。
  幻十郎は覇王丸の肩を借り、境内の石段を降りていた。 
  幻十郎がつぶやく。
 「酒が・・・飲みたい」
 「・・・今夜は・・・呑むか」
  夕日が、覇王丸の眼を潤ませているようだった。
 「・・・阿呆ゥが・・・」
  微笑むと、幻十郎は静かに目を閉じた。   |